
Salesforceのアップデートは、常に新機能や改善が提供される楽しみなイベントですが、時には管理者にとって重要な対応が求められる変更も含まれます。次期アップデートWinter ’26で、特に注意が必要なフローの実行権限に関する変更が予定されています。
この変更を把握しておかないと、「今まで動いていた画面フローが急にエラーになる」といった事態に陥る可能性があります。特に標準ユーザープロファイルを利用している環境では影響が大きいと予想されます。
今回は、この重要な変更内容とその影響、そして今から準備できる具体的な対策について分かりやすく解説します。
Winter’26で何が変わるのか?
一言で言うと、「フローを実行する権限が、プロファイルのデフォルト権限から分離される」という変更です。
- 変更前(現在) 多くの標準プロファイルには、デフォルトで「フローを実行」というシステム権限が含まれています。そのため、ユーザーは特に意識しなくても画面フローなどを実行できました。
- 変更後(Winter ’26以降) セキュリティ強化と権限の最小化というベストプラクティスに基づき、「フローを実行」権限が多くのプロファイルから削除されます。フローを実行させるためには、別途、明示的に権限を付与する必要が出てきます。
この変更は、これまでSpring ’25で予定されていましたが、Winter ’26に延期されたものです。いよいよ適用が迫ってきましたので、早めの対応が不可欠です。
具体的にどんな影響があるのか?
この変更により、最も影響を受けるのは標準ユーザープロファイルをそのまま利用している、またはそれをコピーして利用しているユーザーです。
これまで標準ユーザープロファイルにはデフォルトでフロー実行権限が付与されていましたが、この変更によってフローの実行権限がはく奪されます。
つまり、これまで問題なく使えていた画面フローが、Winter ’26アップデート適用後、権限不足で起動できなくなります。
影響を受ける可能性のあるシナリオ例
- 営業担当者が利用するデータ入力用の画面フロー
- カスタマーサポートが使用する顧客対応用のガイド付きフロー
- その他、特定の業務プロセスを効率化するために構築されたカスタムの画面フロー
これらのフローが突然使えなくなると、日々の業務に大きな支障をきたす可能性があります。
今すぐ準備すべき対策:「権限セット」の作成
この問題に対する最も効果的で推奨される解決策は、「フロー実行」権限を持つカスタム権限セットを作成し、対象のユーザーに割り当てることです。
Salesforceでは、プロファイルでの権限管理から、より柔軟で管理しやすい権限セットによる権限付与が推奨されています。今回の変更は、その流れに沿ったものと言えるでしょう。
対応ステップ
- 権限セットの新規作成
- [設定] > [権限セット] に移動し、[新規] をクリックします。
- 表示ラベルに「フロー実行ユーザー」など、分かりやすい名前を付けます。
- システム権限の付与
- 作成した権限セットのページで、[システム権限] をクリックします。
- [編集] をクリックし、権限リストの中から「フローを実行」を見つけてチェックを入れ、保存します。
- ユーザーへの割り当て
- 最後に、[割り当ての管理] をクリックし、この権限セットを割り当てる必要のあるユーザーを追加します。
この権限セットを事前に準備し、影響を受けるユーザーに割り当てておくことで、Winter ’26アップデート後もスムーズに業務を継続できます。
公式情報・参考リンク
Salesforceから公式な情報も発表されています。詳細な仕様や背景については、以下の公式ドキュメントをご確認ください。
- FAQ:「フローを実行するためのユーザーアクセス権の制限」リリース更新の適用に向けて準備します。
- https://help.salesforce.com/s/articleView?id=001930084&language=ja&type=1
- 今回の変更に関する日本の管理者向けFAQです。影響範囲の確認方法や具体的な対応策について、Q&A形式で分かりやすくまとめられています。まずはこちらを確認することをお勧めします。
- Restrict User Access to Run Flows (Release Update) – Salesforce Help
- https://help.salesforce.com/s/articleView?id=release-notes.rn_automate_flow_release_update_restrict_user_access.htm&release=258&type=5
- Winter ’26のリリースノート(英語)です。変更内容の技術的な詳細が記載されています。
まとめ
Salesforce Winter ’26におけるフロー実行権限の変更は、セキュリティを向上させるための重要な一歩です。管理者としては、この変更に備え、以下の対応を計画的に進めることをお勧めします。
- 影響範囲の確認: どのプロファイルのユーザーが画面フローを利用しているかを確認する。
- 権限セットの準備: 「フローを実行」権限を含んだカスタム権限セットを事前に作成する。
- テストと展開: Sandbox環境などで事前にテストを行い、本番環境のユーザーへ権限セットを割り当てる計画を立てる。
早めに準備を始めることで、アップデートによる混乱を避け、より安全で管理の行き届いたSalesforce環境を維持することができます。公式ドキュメントも参考に、計画的に対応を進めていきましょう。